いつの頃から前日の疲れが残ることが増えてきていませんか?疲れがなかなか取れないと、QOLの低下、さらに仕事の作業効率の低下も懸念されます。疲労は通常一晩寝ればほとんど回復しますが、どれだけ休んでも回復しない疲労を「慢性疲労」と
いいます。
平成25年に市川市職員の皆様を対象に実施した調査では、疲労の自覚症状をVisual Analogue Scale(VAS)というものを用いて、皆様がどのくらい疲労しているかを評価しました。VASは、回答者が今感じている疲労感を0〜10の数字の値とし、回答者の疲れの程度を表すところに〇をつけてもらうものです。かなり強く疲労している7以上と回答された方が、男性では5.8%、女性では14.8%でした。全体平均値をみても男性よりも女性で高く、女性で疲労感が強い傾向を示しました。
では、どのような方において疲労が強かったかを今回の調査結果からみてみますと、強い疲労を自覚していたのは、男性ではむしろ若く、配偶者がなく、残業時間及び仕事での座業時間が長く、睡眠時間が短く、運動習慣がない、朝食の回数の少ない方で、女性では、年齢や座業時間、朝食回数は関係なく、0〜12歳の子供の世話があり、残業時間が長く、睡眠時間が短く、運動習慣がない、定期的な服薬があると回答された方でした。また、男女ともに、喫煙されている方は少なく、何らかの健康食品を摂取していると回答された方が多かったという結果を得ました。喫煙されている方が少なかったのは、疲労感が強く体調がよくないため喫煙を控えている可能性があること、そして何らかの健康食品を摂取していると回答された方が多かったという結果には、疲労感があるので、その改善のために健康食品を摂取している可能性があることに注意が必要です。また、栄養素摂取状況を見てみますと、男性ではショ糖の摂取が多い方、一方女性では、蛋白エネルギー摂取比率が低く、カリウム、カルシウム、鉄、βカロテンが少なく、ビタミンB2、B6の摂取が少ない方に強い疲労を自覚する方が多いという結果でした。
では、男性は女性と比較し、疲労と栄養摂取状況の関連が少ないのでしょうか?いいえ、そうではないと私たちはと考えています。
今回、皆様には食事摂取についてアンケートの形でお伺いし、それを元に栄養摂取状況を推定しているため、男性のほうが女性よりも正確に推定できていない可能性があり(一般的に自らが記入する食事調査では、男性よりも女性のほうが正確に回答するということが知られています)、関連を認めた栄養素の項目が女性より少なかったのではないかと考えています。
強い疲労を自覚していた方は男女ともに、健常者あるいは中軽度の疲労の方と比べ、イライラしている方、ストレスを感じている方、睡眠で十分休めない、寝つきの悪い方、早朝覚醒する、熟眠感がない、睡眠で休養がとれない、健康状態がよくないと答えた方が多かったという結果でした。疲れているからイライラする、ストレスを感じやすい状態なのかもしれません。また、勤務日数と残業時間と疲労スケールの関連をみたところ、男女ともに1ケ月間の勤務日数と疲労には関連がなかったのですが、1ケ月間の合計残業時間が長いと疲労感が高いという結果を示しました。
以上の結果より、疲労回復の方法をご提案します。
平成28年9月1日
東京医科大学 公衆衛生学分野疲労改善研究班