東京医科大学公衆衛生学分野ホームページへのご来訪ありがとうございます。
公衆衛生学は、社会と健康との関連を集団の視点から探求し、人々の健康を守る学問です。超高齢化社会を迎え、社会の価値観が多様化する中で、公衆衛生の果たすべき役割はますます大きくなってきています。私たちは、このような社会の問題解決に役立つ研究を行い、公衆衛生分野の人材育成に貢献したいと願っています。
当分野における研究活動は、生活習慣病対策、特に「身体活動・運動」と「職域におけるメンタルヘルス対策」を主なテーマとしています。具体的な内容は、「主な研究」のページをご覧ください。ここでは私たち研究活動の特徴として、社会に資する研究、国際的な活動、学際的な研究、の3点についてご説明させていただきたいと思います。
はじめに、社会に資する研究についてです。私たちはこれまで、研究成果をもとに、様々な政策提言を行ってまいりました。具体的には健康日本21、エクササイズガイド、職業性ストレス簡易調査票、労働者の疲労蓄積チェックリストなどへの関与があげられます。研究成果を社会に還元できることはとても重要であり、研究者として大変喜ばしいことです。しかし、それだけに留まらず、このような社会貢献は次の研究への強力なモチベーションともなります。社会貢献で得られた声、行政や住民のニーズに耳を傾けることによって、新しい研究テーマを発見し、次の研究を展開するように努めています。
第二に、私たちは、国際的な研究者のネットワークを継続的に強化してきました。身体活動・運動、職業性ストレスの分野の主要な研究者とは密な連携をとっており、共同研究、論文作成を進めています。これまでの成果として、WHO、米国CDCと連携したIPAQ(国際標準化身体活動質問紙)の開発、その他の各種評価ツールの開発、職業性ストレスに関する東京宣言、身体活動トロント憲章日本語版、医学誌The Lancetにおける身体活動特集号の発表、などがあげられます。世界中でどんなことが議論となり、研究が行われているのかをサーチしながら、今、日本で何を行うべきなのか、どんな研究が国際的にインパクトを持つのかを考えています。
第三に、学際的な研究です。公衆衛生学という学問の特徴を反映して、私たちは多様な領域の研究者と協力しながら研究を進めています。異なる分野の方々との連携は、とても刺激的なことです。分野としては、医学、看護、運動、栄養、心理、介護、薬学などの保健医療分野に加えて、地理学、都市交通学、法学、社会学などの領域とも連携を行っています。異なる分野で学びを深めることは容易ではないと思いますが、英知が融合して、思ってもみなかった新しい成果が生まれる瞬間は、まさに心躍る瞬間と表現できるでしょう。
私は臨床医として5年間勤務した後に、公衆衛生の道に進みました。臨床医や産業医として働いている方々と私達ではアプローチの方法が異なりますが、病気を治したい、予防したいという思いは同じです。現場で疑問に思われること、それを解決したいと思う気持ちが研究活動には重要だと考えています。また、医師以外の様々な分野の専門家とも一緒に学び、研究したいとも考えています。私どもと、一緒に研究したい、学びたいと思う方はご一報ください。多くの方々との出会いを楽しみにしています。
(平成24年4月)